私の源:須田千由利

「酸っぱくて、でも甘い。ごはんのお供にピッタリなもの」さて、これは何という食べ物でしょう。
 小学校で倒れてから数日経ったのだろう。真っ白な病室にベットが二つ。テレビはあるが脳と目を使うため見てはいけない。自由に歩き回ることも禁止。そのためトイレには車いすで行く。更に赤ちゃんと二人部屋で話す相手もいない。寝たきりの毎日。窓側ではなかったため常にカーテンとにらめっこ。動いてはいけない毎日はとてもつまらなくてまるで人生が真っ白に塗りかえられているかのようにも感じた。
 しかし、つまらない生活の中で唯一体を動かして良い時間があった。それは食事の時間だ。生きるために必要な栄養を最低限摂取する。色も薄く私は思わず「白に近い色ばかりで、これじゃああの病室とおそろいじゃないか。」と言ってしまった。味の主張というのがまったくなく、正直不味かった。特にお米のお供が何も無くほとんど手を付けなかった。大好きなお米に手を付けない私を心配したのか母は「先生に好きなごはんのお供を持ってきて良いか聞いてみたら。」と、言われた。その言葉を受けた私は「梅干しを持ってきても良いですか。」と、先生に質問をした。無事許可をもらった私は、大好きな味の梅干しを母に頼んだ。
 今、梅干しはお米の中央にある。薄い色の食事の中にそれはそれはダイヤモンドのように輝きを放つ梅干し。はちみつ漬けだからほのかに甘い香りもする。梅干しの赤色がまるで太陽のようなパワーを放っている。「いただきます。」この六語で私はこんなにワクワクしたことがないというくらいこれから食べる食事が楽しみだった。箸を握る。やわらかめの梅干しを一口大に切る。皮の中からは熟しているものが出てきた。すごく美味しそう。梅干しをお米を箸に乗っけて一口。口が切れていたためとてもしみたが、梅干しの塩分が体の細部まで染み渡り一瞬で元気になった。赤くて、酸っぱくて、甘い。私にとって魔法のような食べ物。「梅干し」は私にとってかけがえのないもの。つまらない生活に彩りを与えてくれた。元気な私を支えてくれる。その赤色は私の血液そのもの。と言えるくらい私は梅干しと共に生活をしている。
 「拝啓、梅干し様 私はその赤さや酸っぱさ、種類によって変わる姿。全てが大好きです。この世に生まれ、梅干しに出会えたことに感謝しています。人生、見た目、味に彩りを加えてくれた食材は梅干し様が初めてです。」

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