日本の歴史ある建物は、国内だけでなく海外からの観光客にも人気のスポット。なかでも古くからあるお寺やお城は、年齢や国籍を問わずに楽しめる日本の美しい景色ですよね。
建物自体の規模や細部に及ぶ細かい装飾も素敵ですが、今回注目してみたいのは、こういった建物に必ずといっていいほど存在する「庭園」、それも「大名庭園」と呼ばれる、江戸時代に作られた少し変わったスタイルのものです。
大名庭園とはどんなもの?
江戸時代は実は空前の庭園ブームでしたが、それは江戸を中心に始まった「大名庭園」の文化が、日本全国に広まっていったからです。お城や大名屋敷と一緒に、自らの富の象徴ともいえる豪華な庭園を、各藩の大名たちが競い合うように作っていました。
大名庭園はそれぞれの大名が、自分の好みに合わせて作り上げているため、ひとつひとつに違った良さがあります。広大な土地に、面白い形の石、池や中の島、茶室など、さまざまなデザインが施された見どころのある庭園が多いのがその特徴です。
また、大名庭園のもうひとつの特徴としてあげられるのは、美しさと実用性が備わっているということです。これは大名庭園が鑑賞目的だけでなく、ほかの大名のおもてなしに使われ、社交の場としても活躍していたからでしょう。
人々が集い、美しい景色を見ながらお茶をしたり、刀を交えて武芸の稽古をしていたりという情景を思い浮かべると、大名庭園は「庭」というよりは、「パーティー会場」といったところでしょうか。豪華でスケールの大きな庭園を持つということは、あのころの大名にとって、周りに自分の力を認めてもらうための、重要なアピールポイントだったのです。
鑑賞ポイントはどんなところ?
大名庭園には「回遊式庭園」と呼ばれるスタイルが多く取り入れられており、人々はただ庭を眺めるのではなく、定めた順序に沿って実際に歩いて楽しめるようになっています。一般的にこういった回遊式庭園は、大きな池を中心に、中の島や橋、滝や築山と呼ばれる盛り上がりなどが置かれています。遊歩道に沿ってぐるりと庭園を回ることで、さまざまな角度から庭園を楽しめるのです。
桜や藤、アヤメや紫陽花やツツジなど、四季の花を楽しむもよし。滝から流れ落ちる水の音に耳を傾け、庭園に遊びにくる鳥たちでバードウォッチングを楽しむもよし。庭園のあちこちにある大きな岩を眺めるもよし。広い庭のあちこちに趣向が凝らされているので、自分なりの鑑賞ポイントを決めて回ってみるとよいでしょう。同じ庭園を、何度も違った鑑賞ポイントから散策してみるのも粋ですね。
全国に残る大名庭園はどんなところがあるの?
江戸時代には江戸だけでも1,000ほどあったといわれる大名庭園ですが、現在は全国を見てもその数は数えられるほどになってしまいました。そういった意味でも、大名庭園を訪れてみるということは、貴重な経験なのです。
全国に今でも残る大名庭園として有名なものをご紹介します。
- 「六義園」(柳沢家下屋敷) 東京都文京区
- 「栗林公園」(高松藩) 香川県高松市
- 「水前寺成趣園」(熊本藩) 熊本県熊本市
- 「縮景園」(広島藩) 広島市中区
- 「徳川園」(尾張藩) 名古屋市東区
- 「兼六園」(加賀藩) 石川県金沢市
- 「玄宮園」(彦根藩) 滋賀県彦根市
- 「御薬園」(会津藩) 福島県会津若松市
- 「浜離宮恩賜庭園」(甲府徳川家下屋敷→将軍家別邸) 東京都中央区
- 「小石川後楽園」(水戸徳川家上屋敷) 東京都文京区
- 「偕楽園」(水戸藩) 茨城県水戸市
- 「後楽園」(岡山藩) 岡山市北区
このほかにも大名庭園がありますので、自分の住んでいるエリアに訪問できる大名庭園がないか、今度行く旅行先に有名な大名庭園がないか。ぜひチェックしてみてくださいね。
大名庭園で自分のペースでゆったり時を過ごそう
ゆったりとした気持ちで、リフレッシュがしたい。そんなときは美しい庭園を散歩しながら、四季の花々や景色を楽しむ、素敵な時間を過ごしてみませんか。贅を凝らした大名庭園は、ゆっくりと自分のペースで時を過ごせる魅力的な庭園。心の休息を求めて訪れるのに、ぴったりの場所です。
参考: